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【フルリノベ記録第3話】この土地で建て替えは無理?祖父母から受け継いだ一軒家をどう活かすか

むく太郎の激リアルリノベ裏話シリーズ「築50年・2000万円のフルリノベ記録」第3話
前回は、融資と相続をめぐる「失われた4年」の話を書きました。

【フルリノベ記録第2話】名義問題・既存ローン・市街化調整区域でも諦めなかった!
前回第1話として、ぼくのリノベ実体験を書き始めました。 第2話のテーマは、ぼくがシリーズでいちばん重いと思っている話。 「融資」と「相続」のお話です。 第1話の最後でも触れましたが、ぼくらは「リノベをやる」と決めてから、 […]
銀行を回り、名義を整理し、融資を実行してくれる金融機関にたどり着くまでの長い道のり。
ただ、あの4年間、ぼくらは「お金をどうするか」だけを考えていたわけではありません。
並行して、もうひとつの問いをずっと抱えていました。
「この家を、どうするのか」
フルリノベ、建て替え、部分リノベ、引っ越し。
選択肢は4つ。
結論から言えば、ぼくの中では早い段階から「フルリノベ」にほぼ傾いていました。
でも、残りの3つがなぜ消えたのかを書き残しておくことには意味があると思っています。
同じような条件で悩んでいる方にとって、消去法の過程こそが、いちばん参考になるはずなので。
融資の窓口で知った「建て替え」の現実

銀行回りの話は前回詳しく書きましたが、あの窓口では融資の可否とは別に、もうひとつ大きな事実を突きつけられています。
建て替えの可能性について聞いたときのことです。
市街化調整区域にある築50年の物件。
担当者から返ってきた答えは、こうでした。
「評価額のおおよそ7割程度が、融資の上限になります」
金額にして、数百万円。
愕然としました。
数百万円では、家は建ちません。
建て替えとなれば、まず既存の建物の解体費用だけで百万円単位がかかる。
その上に新築の建築費が乗る。
数百万円で収まる話では、到底ない。
市街化調整区域の物件は、金融機関から見た「担保としての価値」が、市街化区域と比べて大幅に低くなります。
融資の土俵に乗せること自体が、そもそも難しい。
第1話で書いた「新築は年収倍率で無理だった」という話と、ここでまた合流するわけです。
建て替えという選択肢は、仰々しくかしこまった銀行応接室で、静かに消えました。
「部分リノベでいいんじゃないか」を、すぐにやめた理由

建て替えが消え、引っ越しはこの時点でもう選択肢にはなかった。
残ったのは、「どこまで手を入れるか」という問題です。
フルリノベか、部分リノベか。
一瞬だけ、考えたことはあります。
「水回りと断熱だけ直せば、あと何年かは持つんじゃないか」と。
費用は当然、フルでやるより抑えられる。融資のハードルも下がる。
夫婦で少し話しました。
でも、すぐにやめた。
理由は単純で、築50年だからです。
水回りだけ直しても、壁は歪んだまま。
断熱を入れても、窓のサッシは、今ではもう存在しないメーカーのもの。
間取りは、1階がパン屋で2階に家族4人という無理のある構造のまま。
ひとつ直せば、直していない部分の古さがより際立つ。
そして数年後、「やっぱり全部やればよかった」と思う自分が、はっきり見えました。
後悔してもう一度お金をかけて直すくらいなら、一度で全部やるほうが、結果として安いし、精神的にもずっと健全です。
築浅の家なら、部分リノベで十分だったかもしれません。
でも築50年。
中途半端に手を入れるには、古すぎました。
調整区域だからこそ、「リフォーム」で攻める

消去法で残ったフルリノベですが、ぼくにとっては消極的な選択ではありませんでした。
むしろ、積極的に「これだ」と思える理由があった。
新築よりコストを抑えられる。これは当然として、市街化調整区域ならではの事情がもうひとつあります。
建て替えでは融資がほぼつかないこの物件でも、「リフォーム」として融資を組むなら話が変わってくるのです。
既存の建物に手を入れる形なので、建て替えとは融資の枠組み自体が違う。
市街化調整区域で新しく家を建てようとすると壁だらけなのに、今ある家を「直す」という形を取れば、道が開ける。
ぼくらにとって、フルリノベは制約をくぐり抜ける唯一の道筋でした。
しかもフルリノベなら、間取りも素材も自分たちで決められる。
1階のパン屋をどう残すか、家族4人のリビングをどこに置くか、子ども部屋をどう確保するか。
ぼくらの暮らしに合わせた家を、一から設計し直せる自由がある。
新築では手が届かなかったその自由度が、フルリノベでは予算の中に収まりました。
制約の中から生まれた選択が、結果的にいちばん自由度の高い選択だった。
少し皮肉で、でも悪くない話だと思っています。
大工さんと建材イベントに足を運んだ日

方向が決まると、次は「いくらで、何を入れるか」を現実の数字に落とし込む段階です。
ここで力になってくれたのが、二十年来の旧友でもある大工さんでした。
費用を少しでも抑えたい。
その思いを率直に伝えると、大工さんから返ってきたのがこんな言葉です。
「建材の業者限定イベントがあるから、一緒に行こう」
ふだん一般の人は入れない、建築のプロ向けのイベント。
メーカーや問屋が建材・設備を特別価格で並べ、プロが仕入れ先や新商品を見て回る場です。
そこに大工さんの名前で、一緒に入れてもらいました。
キッチン、ユニットバス、フローリング材、断熱材。
ショールームのカタログで眺めていた設備が、目の前に実物として並んでいる。
しかも、いくつかはカタログ価格とは比べものにならないほどの金額でした。
あの日ぼくが持ち帰ったのは、パンフレットの束だけではありません。
「この予算で、このクラスの設備が入れられる」という具体的な実感。
フルリノベという選択肢が、頭の中の構想から、手の届く現実へと変わった瞬間でした。
「長男の就学までには」家族の時間から逆算

何をやるかが決まり、費用の道筋も見え始めた。
あとは「いつやるか」です。
ぼくの中には、ひとつだけ動かせない期限がありました。
上の子が小学校に上がるまでに。
リノベ工事の間、ぼくら家族は仮住まいに移ることになります。
施工期間は半年以上の見込み。
もし子どもが就学してから仮住まいに移るとなると、通学路が変わり、できたばかりの友達関係にも影響が出る。
生活のリズムが固まったあとに半年だけ別の場所へ移るのは、大人のぼくらはどうにかなっても、子どもへの負担が大きすぎると思いました。
やるなら、就学前の今しかない。
5歳と3歳。
保育園に通っている今なら、住む場所が一時的に変わっても、子どもたちの世界への影響はいちばん小さく済む。
これが1年、2年先になれば、条件はどんどん厳しくなっていく。
融資と名義に4年を費やしてきたぼくらにとって、「もう先延ばしにはできない」という感覚は、計算以上に切実なものでした。
家族の時間は、ぼくの都合では止まらない。
家の問題を棚上げにしている間にも、子どもは確実に大きくなっていく。
フルリノベを「やる」と最後に腹をくくれたのは、お金の話でも制度の話でもなく、子どもたちの時間軸だったのだと、いまは思います。
話はいよいよ、設計へ

「フルリノベで行く」と腹が決まり、ぼくらはようやく「何を造るか」の具体的な話に入っていきます。
100㎡のなかに、家族4人の暮らしと妻のパン屋をどう共存させるか。
間取り、素材、動線、予算配分。
第4話「設計編」では、大工さんとの打ち合わせを軸に、設計をめぐる話を書く予定です。
次回も乞うご期待。
では、じゃばら。


