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むく太郎の激リアルリノベ裏話シリーズ「築50年・2000万円のフルリノベ記録」
ついに最終回となりました!
前回は、解体から完成までの半年の現場の話を書きました。

壁が剥がされ、床が抜かれ、家が一度「骨」だけの姿に戻り、そこからまた立ち上がっていく時間。
その半年が終わり、ぼくら家族は、新しくなったこの家に戻ってきました。
築50年の家が、家族4人と、妻のパン屋を受け入れる形に生まれ変わって。
このシリーズも、いよいよ最終話です。
第6話は、リノベが終わったあとの暮らしと、住んでみて初めて見えてきたことを書いていきます。

仮住まいから荷物を運び込み、はじめてこの家で過ごした日のこと。
玄関を開けて、最初に感じたのは、不思議な感覚でした。
懐かしさと、新しさが、同じ場所に同居している。
祖父母が建て、父が暮らし、ぼくら家族が住んできた家。その輪郭は、確かにここにあります。
けれど、中身はすっかり新しくなっている。
古いものと新しいものが、どちらも消えずに、ひとつの家の中にある。
そして何より、居心地がいい。
言葉にするとそれだけのことなのですが、家に帰ってほっとする、というのは、思っていた以上に大きなことでした。

まだ住みはじめて半年です。
それでも、はっきり言えることがあります。
以前のこの家と比べて、快適さが段違いだ、ということです。
いちばん変わったのは、やはり断熱でした。
第4話で「ここは譲らない」と書いた、あの断熱です。
冬の寒さも、以前とはまるで違う。
壁・床・天井・窓に手を入れた効果は、暮らしの底のところで、毎日じわじわと効いてきます。
そしてもう一つ、住んでみて驚いたのが、静けさ。
家の中が、とにかく静かなのです。
古いサッシを入れ替え、壁の中を作り直したことで、外の音がぐっと遠くなりました。
派手な変化ではありません。
けれど、冬の体感とこの静けさ。
この二つだけでも、フルリノベをした甲斐があったと、ぼくは思っています。
夏も快適であればいいなぁ。
リノベしてよかった。

家事動線も、おおむね満足しています。
キッチン、洗面、風呂、洗濯機を近くにまとめた効果。
毎日の家事の往復が、確かに減りました。
妻も、概ね満足してくれている様子です。
残っているのは、家具の配置です。
どこにテーブルを置くか、棚をどう並べるか。
これは「正解」がある話ではなく、暮らしながら少しずつ整えていくもの。
不便というより、むしろ楽しみとして、いまも試行錯誤しています。
箱が出来上がったら終わり、ではない。
そこから、自分たちの暮らしに合わせて整えていく時間が始まる。
家具を動かしながら、そんなことを感じています。

1階には、妻のパン屋があります。
リノベで新しい売り場を増築し、旧厨房はそのまま残しました。
住んでみて良かったのは、仕事の空間と暮らしの空間が、しっかり分かれたことです。
オンとオフが、ちゃんと切り替わる。
店として動く場所と、家族がくつろぐ場所。
その距離感が、ほどよく保たれた配置になりました。
仕事にメリハリがつくし、それでいて、子どもたちをしっかり見守れる近さでもある。
店と家がひと続きでありながら、混ざりきらない。
パン屋をやりながら子育てをする、ぼくらの暮らしに、ちょうどいい間取りになったと思っています。
子どもたちの反応は、わかりやすいものでした。
引っ越し初日、上の子はテンションが上がりすぎたのか、興奮して夜遅くまで起きていました。
新しい家が、よほど嬉しかったのだと思います。
そして、これは予想していなかった変化なのですが。
それまでお風呂を嫌がっていた子が、自分から風呂に行くようになりました。
住設をタカラスタンダードにして、風呂も洗面もサイズアップした。
そのレベルアップが、子どもにもちゃんと伝わったのだと思います。
大人が「快適になった」と感じる部分を、子どもは子どもなりに、肌で受け取っている。
毎日のことだからこそ、こういう小さな変化が、いちばん嬉しい。

素材選びの「答え合わせ」も、少しだけ書いておきます。
無垢材は、間違いなく癒しの効果があります。
木目を見ているだけで、気持ちが落ち着く。
そして、木の香り。
家の中に、ほのかに木の香りが残っていて、これが心を落ち着かせてくれます。
合板では、こうはいかなかったはずです。
住設のタカラスタンダードも、いまのところ申し分ありません。

「スタンダード」という名前のとおり、機能性に過不足がない。
派手さで選ぶものではなく、毎日使って疲れないものを選ぶ。
その判断は、住んでみて正解だったと感じています。

正直に、住んで初めて見えた「惜しい」も書いておきます。
一つは、LDKの照明です。
ダウンライトにしたのですが、これが調光できないタイプでした。
明るさを場面で変えられたら、もっと良かった。
小さなことですが、毎日過ごす場所だけに、少し惜しいと感じています。
もう一つは、漆喰の壁。
質感はとても気に入っているのですが、子どもがガッツリ汚すんです。
手の跡も、こすった跡も、容赦なくついていきます。
これは漆喰を選んだ時点で、ある程度は覚悟していたこと。
後悔というより、「これも含めて漆喰だな」と、半ば笑いながら付き合っています。
家は、住んでみて初めて見えることがある。
それを差し引いても、選んでよかったと思える。それが、いまの正直な気持ちです。
第5話で書いた、屋根裏の上棟板。
祖父の名前が墨で書かれた、あの一枚の板です。
あれは、外さずに、そのままにしてあります。
きれいに飾り直すでも、しまい込むでもなく、もともとあった場所に。
これからも、この家を見守ってほしい。
そんな意味を込めて、あの板には、屋根裏に残ってもらうことにしました。
祖父が建てた家を、壊さずに直して住み続ける。
その選択の証人として、あの板はこれからもずっと、ぼくら家族の頭上にあります。

全6話、長いシリーズにお付き合いいただき、ありがとうございました。
築50年、2000万円のフルリノベ。
融資に4年かかり、相続を自力でまとめ、大工さんと半年の現場を過ごし、いまこうして暮らしています。
最後に、シリーズ全体を通して、ぼくが伝えたかったことを書いておきます。
一つは、古い家にも、ちゃんと価値があるということ。
解体してみたら、祖父の建てた家は、想像よりずっと丈夫でした。
古いから壊す、ではなく、いいものを見極めて、直して住み継ぐ。その選択肢は、もっと知られていいと思っています。
もう一つは、お金の使い方です。
削るところは削り、長く効くところには、しっかり置く。
そのうえで、住みたい家や、過ごしたい空間は、貪欲に求めていい。ぼくは、そう思っています。
我慢して妥協した家ではなく、ちゃんと欲張って選んだ家。
それが、毎日の暮らしの満足度を、確かに底上げしてくれています。
築50年の祖父母の家は、いま、家族4人と一軒のパン屋を抱えて、また新しい時間を刻みはじめました。
長いあいだ、本当にありがとうございました。
では、じゃばら。